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Channel: 知床桜
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ふるさと少年探険隊に猟銃を携帯(護衛)して

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平和な日本、都会に住んでいる方々にとっては信じられない世界かもしれません!
 
さて、猟銃を所持して一般の方々と行動することは法律にのっとって行われているので問題はありませんし、知床国立公園内に於いても外来種駆除作戦やゴミ拾い等の際は猟銃を所持したハンターが同行しています。
 
北海道内ではよく行われているのが山間部の高圧送電線の検査!
 
同じく山間部での測量作業!
 
実際に道南では送電線の検査中に出くわしたヒグマが突進してきて射殺されています。
 
ヒグマのテリトリーで作業をする方にとってハンターは最後の砦であり頼りにしていることと思います。
 
しかし、自分も送電線検査の護衛をしたことがありますが、そんなお気軽なものでは無く強いストレスがかかる護衛でもあります。
 

さて本題です。
 
少し話が長く、重くなりますので気に入らない方はスルーしてください。
 
初老期(向老期)に入った52歳のおじさん(最近はお爺ちゃんと呼ばれるのも慣れた)の戯言です。
 


ふるさと少年探険隊同行に際して猟銃を携帯しての同行について、これはあくまでも猟友会として海岸線で漁労作業に従事している漁業者の安全を確保するための巡視という位置付けです。(許可証上の意味です)
 
ふるさと少年探険隊とは都合が合うので一緒に行動しているわけでもあります。
 
この記事が自動的に投稿される時間、自分は既に出発しているでしょう。
多分、観音岩あたりかな?
 
ふるさと少年探険隊に参加するのが今年で6回目となります。そして状況の変化により連続して参加するようになって4回目です。
 
 
   状況の変化(野生動物との接近距離)
 
知床が世界自然遺産に登録された10年前、当時はヒグマはいても探険隊の前にその姿を現すことはほぼありませんでした。わずかに糞などの痕跡が残る程度です。
 
2008年、人馴れした羆の徘徊情報が知床岬までの行程に点在する番屋、漁業者らを通じ寄せられるようになりました。
 
その年に事態を重く受け止め、初めてふるさと少年探険隊に羅臼猟友会の会員が同行しました。
 
翌年からは同じ猟友会の別な方が3年ほど同行していましたが4年目の年にエゾ鹿との交通事故で重傷を負い同行不可能となりました。
 
その4年目(2012年)は気象、海況の変化でヒグマのエサ不足が深刻化、飢餓状態となり異常な出没、行動が起こり大量の捕殺駆除となった年です。
 
事態を重く受け止めた当時の関係者、特に隊長であるHさんはことのほか危惧し、自分のところへと打診が!
 
しかし、稼業もあり高齢で問題を抱えた両親二人をほったらかしにし、1週間近く家を留守にするわけです。ましてや何かあっても連絡も着かない、戻ることも簡単ではない中で同行することの意義の重さに悩みました。
羅臼町には羆対策を専門に請け負う部署と言うか組織団体があります。そちらにもハンターが数名所属しており、悩んだ挙句まずそこへ行きその部署からの参加を個人的に打診しましたが、立場上それは出来ないという回答を得、自分の覚悟が決まりました。
 
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その年の同行は羆の出没が苛烈を極めました。

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何の保証もないまま、最悪の事態も想定しなければならない中での行程は寝不足となり、ストレスは帰還後に体に現れ病院を受診したほどです。
 
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団体が立場上、発する意見は至極まっとうな意見でもあります。
 
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世界自然遺産地域、国立公園内に於いては野生動物が優先されます。我々、人の側はそこにお邪魔させてもらっているわけですから遠慮しなくてはいけません。
 
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歴史があるとはいえ、探険隊が通るのだからそこのけ!邪魔だ!追い払え!場合によっては緊急避難では無くても『殺してしまえ』はあってはならないことで、クマがいる場合は存在を刺激しない程度に知らせ、移動するまで待つ、あるいは引き返すことが一般のトレッカーに周知されています。
 
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探険隊だから特別扱いはできないわけですし、ルールは守るべきです。
 
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しかし、ヒグマは国内最大の肉食猛獣です。
 
平和な動物保護団体が唱えるのとは違い予想だにしないことが起こります。

臆病だというのは人馴れする前の話!

北米やロシアなどでは成獣となったオスのヒグマは特段の注意を払うことが周知されていますが、助言を無視した日本の著名な写真家が死んでいます。
 
そして、不測の事態が発生したその時すべてのスタッフが最適な行動をとることが出来るのかと問えば難しいと思います。
 
羆による死亡事故は毎年、全道各地で起こります。知床が遭遇頻度の割に事故が少ないのは努力と時に『運』によるものです。
 
ブラフチャージ(威嚇突進)と殺る気の違いは結果としてわかるのであって、その区別はどんな高名な専門家でもわかりません!

ブラフチャージのつもりでも、人の側が刺激するような行動であったり弱い部分を見せればそのまま襲い掛かるのが獣の本能です。
 
これが子供たちスタッフに対して行われたときにどうすべきか?
 
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人の持ち物に対して執着している場合はどうすべきか?
執拗に付きまとう時はどうすべきか?
 
ブラフチャージの場合は結果が最悪な場合を考えるべきで行動にうつそうと思います。
 
その時、きっとその行動が自分の責任による探険隊と言う歴史の幕を引く原因となるでしょう。
 
そして、結果として全責任を取り、銃を置くことになります。

でも、子供たちスタッフの安全が守られるのならば本望です。

全国から非難の声が集中するでしょう。ひょっとしたら世界自然遺産登録委員会からも来るかもしれませんし?

 
多くの関係者にご迷惑をかけるでしょう。その点だけが心配です。


4年前、あまりのヒグマの出没に隊長は幕引きを自分の責任で考えました。
自分が責任者として同行する間はまだしも、後進に道を譲るときにこの重い責任を託すべきではないと判断しての意見でした。
 
同行した過去のハンターの中には、『こういう状況になってきている以上あえて危険な場所に子供たちを連れて行くべきではない、廃止すべき』という意見が出ました。
 
ヒグマ対応団体からもそう言う意見が個人的に出されています。
 
そして何よりも過去に隊長として参加し、現在町議をされている方も自分が質問した際に同じことを言われました。
 
でも、最終的には子供を参加させる親の意志、子供の気持ちなんだと思います。
 
そして、我々大人はその思いに応えるべく最大限の努力を惜しむべきではない・・・かと!
 
ふるさと少年探険隊が廃止されるとしたら、それは参加する児童生徒がいなくなってからで良いのではと思います。
 
 
繰り返します。
 
知床のヒグマの中には人をまったく恐れない熊が増えています。そしてそれらの熊が人前に普通に表れるわけです。
 
これは、知床だけの問題では無く北海道内全て、ツキノワグマも含めると本州全てに言えるわけです。
 
猛獣の危険は知床だけでは無く普通に民家や通学路でもあり、それが常態化しています。
 
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あれから今年で4年目となります。
 
毎年参加するにあたり考えます。
 
今年の熊は大丈夫だろうか?
 
自分はあと何年参加できるのだろうか?
 
この重い責任を猟友会後輩に託すべきなのだろうか?
 
過去には良く知る友人二人の極めて危険な事件がありました。
 
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新聞紙上には詳しくは書かれていませんが当時のことについて申しておきます。
 
  1. :現場は見通しの悪い岩礁地帯、時化模様で波と強風で音も声もかき消されていたこと。
  2. :怪我を負ったオス熊はけんか相手から逃げ岩陰に身を潜めていたこと。
  3. :一緒に歩いていた二人の間に吠えながら突進してきて割り込んだこと。
  4. :現場は極めて狭く陸側は断崖絶壁、数メートルで海です。
 
これが大事に至らなかったのは二人のとっさに取った最良の行動と運です。
 
こんなことが子供たちの間で起こらないように単独で先頭を行くのです。
 
今年も何事も無く、無事帰ってこようと思います。
 

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