前回より
『生くぞ!』
『準備しろ!』
船頭多くして…とは言いますが、絶対的な説得力、カリスマ性が皆に勇気を与え気合が入りました。
『行くしかない』と
みんな一斉に準備を始めます。
ただ事ではない雰囲気に子供たちにも緊張が走ります。
男性スタッフがまず最初に現場に入ります。
若干和らいできているとはいえ、相変わらず荒れています。
それでも当初よりは波の間隔があり、自分も含め一気に駆け抜け荷物をおろし、ザイルを張り、要所要所に張り付きます。
我々は命綱なし、波が押し寄せたときは岩をよじ登りしがみつくだけです。
ザイルは子供たちや女性スタッフの安全を確保する意味からもつけるわけにはいかなかったのです。
隊長の判断はまさに絶妙でした。遅ければ暗くなり、早ければ犠牲者が出ていた可能性がありました。
波の切れ間を見ては子供たちを送り出します。
波浪で声はかき消され気味!必死に大声で声を出し合います。
恐怖のあまり途中で立ちすくむ子供もいて、時に手を引き、時に抱え込んで走ります。
声がかき消され、タイミングが判らないまま来てしまうときはスタッフが体を張って安全を確保します。
子供たちもスタッフも、表情から余裕は消え必死です。
泣きながら辿り着く子供もいれば、軽い過呼吸を起こす子供も、反面何事もなく楽勝だぜと言う中学男子!
他にも知床倫理委員会の許可が下りないものが多数あり、画像、内容は公表できません。
全ての子供たちが渡り終え、女性スタッフも続きます。
渡礁を終えるとすぐに最後の崖登りです。
中学男子は余裕です…この連中になるとザイル無しも大丈夫ですがそこは倫理上!
わんぱく隊の小学生もここを抜けると、もうゴールなので最後の力を振り絞って頑張ります。
この日のゴール地点、モイレウシ湾(通称モイルス)では直ぐにテントの設営に自分たちで取り掛かります。
(スタッフ:左からいけやん、しづちゃん、エコ)
(スタッフ:左からヤナ、シュウゾウ)
スタッフはその間に夕食であるジンギスカンの準備や大型野生動物の侵入に備えて電気柵の設置などを日没前にこなします。
乾杯の準備です。
今日一日を振り返りながら副隊長スケさんの挨拶で乾杯!
いつも以上に美味いジンギスカンでした!
毎年この時のジンギスカンに勝るものは無いですね!
この日、幾度となく最も危険な場所を担当したみっちゃんと隊長、
子供たちが時に怖れ、時に最も頼りにする二人です。
初参加のガッチャン(右)も活躍しました。文化財の学芸員として羅臼に来てまだ日は浅いですがこれからの探険隊を背負っていくはずです。
午後8時、明日はチャレンジ隊が知床岬を目指して出発します。
入念な打ち合わせ、確認をもう一度行います。
子供たちが寝静まった後、スタッフで反省や子供たちの様子、明日に向けての話し合いを深夜まで行います。
台風には何度か過去に影響を受けて難儀したことはありましたが今回のようなケースは初めてです。
危険と言ってしまえばそれまでですが、、だからと言ってすべての危険を排除していてはきっと本当の意味で自分の身は自分で守ることを学べないのではないでしょうか?
きっと世間的には無謀であるような行動ですが、我々はあの時最も確かで確実にその場で最大限出来得ることをしたと思います。
こうしていまだかつてない初日を過ごした探険隊の夜は更けて行くのでありました。
つづく!