さて、デバリを無事全員が通過したころには既に干潮時間を過ぎ満潮に向かい始めていました。
海は相変わらず荒れています。
どの隊員にもすでに難所と言えばモイレウシ湾最後の登りだけと思いがありました。
一路、化石浜をゴール目指して歩きます。
化石浜にある昭和40年代ごろの羅臼漁協?の施設の残骸前を通過していきます。
化石浜終点でこれから残りの岩礁地帯を前に休憩です。
大岩がゴロゴロしてはいますが難しい場所ではありません!
タケノコ岩手前の大岩トンネルを前に隊列を組みなおします。
既に満潮に向かっているので、慎重に渡らないと足を濡らします。
トンネルを潜り抜け、隊員たちはみっちゃんを先頭に続々と湾内に潜入してきます。
しかし、湾内に吹き込む風の異常な強さにスタッフ数名でタケノコ岩の狭い通路を確認しに行くと・・・・・・
とんでもないことに!
東風さえ吹かなければいつもはこんな感じの通路!(ほぼ満潮時の画像です)
がけ下は意外と広く平らな通路で、安全に渡れます・・・・が!
なんと、地形の関係でこの狭い通路めがけて周囲の海流、波浪が集約されて通り抜けていたのです。
波の合間を縫って何とかザイルを渡せないかとみっちゃんが挑戦しますが、岩にしがみ付くだけで精一杯です。
体格がよく、握力があるのでしがみ付いて居れますが、女性や子供なら簡単に引き剥がされます。
安全な場所まで50mのザイルでは足りません!
幹部スタッフが集まり協議し、様子を見ることに!
時刻はもうすぐ午後1時です。これからの行程を考えると最低でも3時くらいには出発できないと暗闇の中での行程となりますがほとんどの隊員スタッフは夜間装備をしていません!
既に最大干潮時間の午前10時はとうに過ぎ、通過してきたいくつもの難所はもはや通行不能が予想され、体力、時間的に戻ることは不可能です。
加えて、沿岸部は波浪が激しく船が近寄ることはできませんので海からの移動も不可能です。
まさに『前門の虎後門の狼』と言うやつです。
ここで、隊長が動きました。
『待つ!』
風は凪て行くはず、そうすれば満潮時でも波の合間を縫って通過は可能という判断です。
正直、自分は半信半疑でした。
凪るとしても陽が沈むころ、大人や体力のある中学生は移動できたとしても全員は無理では?
もう危ない橋は渡らずに全員、化石浜にある朽ちかけた漁協番屋で…と思っていたぐらいでした。
岩のトンネルを戻り、陽の当たる場所で待機です。
天気概況を探るべく衛星電話を使用しますが、これが意外と使えない(頼り無い)ことを知りました。
この間中も隊長は一人で現場に残り、波を読んでいます。
隊長はこの近くにある秋サケ定置網の親方の一人でもあり、現場の海況を熟知していました。
午前2時を回ったころ、隊長が動きました!
『生くぞ!』
『準備しろ!』
船頭多くして…とは言いますが、探険隊において隊長は絶対的な説得力、カリスマ性があり、皆に勇気を与え気合が入りました。
『行くしかない』と
みんな一斉に準備を始めます。
ただ事ではない雰囲気に子供たちにも緊張が走ります。
つづく!