少し話が長くなりますのでご容赦ください。(記録的日記の意味もあるので)
尚、内容については個人的な見解もあり専門家の先生方を差し置いて何言ってんだということになろうかと思いますが、日頃海の現状を観察していて思うことは間違っていないと思っています。
7月28日、根室にセミクジラが揚がったという情報が北大から自分に来たのがその日の午後遅く、既に根室市が翌日早朝から埋設するということで手出しのできない状況でした。
根室市の学芸員T君らが採材するということで市民でもない自分は任せることにした次第です。
根室の海岸にクジラ漂着 絶滅危惧種セミクジラか
【根室】根室市落石の三里浜で7月28日、波打ち際にクジラが打ち上げられているのが見つかった。絶滅危惧種に指定されているセミクジラとみられ、専門家は「打ち上げられるのは大変珍しい」と話している。
体長17メートル、メス、推定30トン以上あるセミクジラの死骸が北海道根室市の海岸に漂着し、近くの丘に埋められた。周辺では夜な夜な出没するヒグマを呼び寄せないように市がほぼ1日でスピード処分した。
絶滅危惧種で、捕獲が禁じられて30年あまり。海水ごと飲み込んだプランクトンをこして食べる長い「鯨ひげ」は弾力性に富み、西洋では、高貴な女性のドレス用コルセットの材料となった。
日本では、文楽人形を操る仕掛けなどに珍重され、伝統を受け継ぐための鯨ひげの調達は困難を極めている。埋められた巨体をもったいないと思ったのは、クマよりも人間の方だったかも。【本間浩昭】
(北海道新聞の記事から)
仰向け状態で髭板が左側に見えています。
ヒゲクジラの死体は例外なくお腹が上になりますね!
(毎日新聞本間さん撮影)
関係者(おそらく処理担当の土建会社の方と思われます)の方がクジラに上がっていますが、これでピースサインの画像でも流れたら、たちまち炎上でしょうか?
セミクジラについて
詳しいことはウィキへ
とにかく希少でその絶滅寸前に追い込んだのが捕鯨、日本が叩かれますが、実はアメリカやロシアの方がはるかに殺しているという事実があります。
今現在で100~200頭という推定ですが,種としてこれはもう回復不可能な気がしますね!
なぜか?
それは昔から海を見ていて、圧倒的な海を漂うゴミの量です。
自然に還ることのない人間由来のゴミがありとあらゆる海の階層を漂っています。操業中でも海面から視界の利く範囲の中層をたくさんのビニル製品がクラゲや海藻の様に漂っています。
ヒゲクジラの仲間は大きな口で海水ごと様々な餌を口の中に入れて海水を濾して食べるわけですがビニル製品は、おそらく消化器官に入るはずですし、近年胃の中から大量のゴミというのがそれを裏付けています。
素直に肛門から出て行けばよいですが、柔らかいビニルばかりとは限りません!
我々の体になぞらえればよくわかるのではないでしょうか?
ちょっとした地球環境の変化で数十年後には絶滅しているかもしれないと感じています。
同じように過去、平成15年に茨城県日立市川尻港付近に漂着した時の対応です。
山田先生はじめ科博の方々も見えられていますね!官民一体での作業、多くの人が興味津々で見守っています。
セミクジラはこんな感じとしてネットで紹介されていました。
今回のセミクジラは根室市のT学芸員が巻き尺で計測し、17mということがわかっていますので新鮮な状態なら60tはあったのではないでしょうか?
ちょうど、8月下旬に知床の斜里側の海域でセミクジラの目撃情報がニュースになっていましたし、過去には奄美でも動画が撮影されています。
どれだけ貴重な経験、情報だったかが窺い知れますが、今回は根室市の事情というか対応の仕方によりただのゴミとしてしまうのはあまりに悲しいことです。
話がそれますが、東大が管理していた貴重な絵画を処分したり、自治体らによる遺跡や貴重な文化物の破壊、美術、芸術品の管理不行き届き、後世に残していくべき遺産を雑に扱うことはイスラム過激派の破壊活動と同一です。
政治家はじめ上に立ち、導く者は金感情ではなく、未来を見据えて欲しいものです。
今回、熊がどうのこうのという理由付けされていますが、正直現場の地理をよく知っていて、根室の猟友会の方ともお話しする機会も多くいる自分として、また熊を追い払いながら検体採取を何度も経験している者としては言いたいことは山ほどありますが他所様の自治体の話、内輪の力関係みたいなので止めておきましょう。
検体採取、死体回収の現場では時々、彼等とこういうことも
しかし、国の官庁でも環境省が一番弱いのと同様に地方自治体も同様の中、根室市の生物関係者が心で哭きながら・・・・悪あがきをしながら・・・最後の最後まで諦めなかったようで髭板と頭部の一部を回収することに成功しました。
回収した髭板と頭部は海岸の草地の上に!
野ざらしとなりましたが、言っている通りに熊が夜な夜なならば跡形もないはずで周辺は1か月たった今でも異臭が凄いです。せいぜいキツネが頑張って掘りに来ていますが!
髭板、ロシアサハリンからの研究者らも見学に来るほどです。
1か月ほど野ざらし状態でしたが、ここでは公表できない諸般の事情もありこの髭板の回収依頼が北海道大学から自分に来ました。
出動となりましたが、折しも足を痛めていて練習もできず、漁模様も悪く、小定置の手伝いで食いつないでいた自分には時間があるという幸運?
現場の正確な位置情報と画像がfbで送られてきましたが、そこはやはり現地で確認してみないとわからないことが多々あります。
奥が破壊されて一部が残っている頭骨です。手前の二つの黒い塊が髭板本体!段丘の上は冬季のエゾ鹿越冬地帯でJRの線路が走り、鹿の衝突、ワシの衝突の多発地帯で何度も現場に足を運んだ経験があります。
そうそう、ピンと来ないかもしれないので代表的な鯨の髭板サイズを公表しておきますね!
ミンククジラなんてせいぜい30cmくらいなので化け物サイズですね
8月22日、現地に到着しました。
頭骨だけで1.5tトラックの荷台がいっぱいですが、今回は依頼に含まれていないので放置です。
上に向かってくちばしが数メートルあったはずですが、粉々に破砕されてしまいました。
脂臭凄し!熊が居たら毎日噛み噛みしますネ。
頭頂部はこんな感じ!穴について学芸員T君と話したのですが、これが噴気孔なのか頸椎とのつなぎ目の部分なのか迷いましたが位置的に噴気孔かと?
まずは下の砂を掘り、均等に力加減が分散されるようにロープをかけます。
次に髭板に挟まり込んでいる砂を少しでも除去するために、間を開きます。
作業は慎重にが鉄則です。
左右あるので二つ目も同様に行いますが、既に髭板の一部は無くなっています。
髭板からの自車方向!
クジラ本体が埋められていますが、標本としての価値は絶滅した時に出るかもしれませんが、それまでにバクテリアに分解されて太い部分以外は残らないでしょうね!
一応、下処理は終わり、やり遂げた感?
周辺の漂着ゴミもついでに拾って、対応をどうするか大学側と協議し、明日の午前10時に地元関係者集合ということになりました。
現場の遠景!
翌日、早朝の小定置の網おこしを手伝った後、準備して現場へ向かいました。
9時半には到着予定でしたが、根室市から頭骨の移動も協力して欲しいという依頼もあったのでその準備です。
ところが、早朝既にお手伝いをお願いした漁業者(タイヤショベル)の方が気を利かしてくれていて既に待っているという連絡が!
作業中の画像はありません!
お手伝いいただいただけでも大変ありがたいことです。
こうなりました。
この上に頭骨も!
頭骨は根室市の資料館の方に置いてきて、髭板のみ回収。
熊ならこちらが核心地ですが、自分の基地港に保管ということで慎重に移動中!扱いは丁寧にが基本です。
熊?出て来たらまた海の放り込むわ!
8/27月曜日に調査、解体となりました。
関係者、学生も4大学から!
調査の指示はストランディングネットワーク北海道(北海道大学水産学部松石研究室)が行います。
髭板の分解。
指示されなくても自分が何をすべきか判断しそれぞれ動いてくれるのは日頃からフィールドワークの世界に居るからでしょうね!
分解は大変でしたね!
女子率高し!
こう見えても腐った歯茎に当たる部分が凄まじい異臭を放っています。
このあと、分解調査されたクジラ髭はそれぞれの施設へと行き先が決まっています。
自治体にとってはただのゴミ、厄介なゴミという貧弱な判断をしがちです。これは10年前の羅臼も同じで、自分の目を盗んでクジラを施設に運び込むのを現行犯で見ています。
でも、貴重な研究資料。うまく活用する、研究者らを味方に付けることは決して損では無いです。
自治体はじめ現地管理者は柔らかい臨機応変な考え方で接して欲しいものです。
最近、生物系の友人らを見ていても昔はもっと柔軟だったようなぁ~と思う人が何人かいて、変わらない自分が馬鹿なのか、少し悲しくなっています。