まず初めに断っておきたいことがあります。
天然記念物の希少鳥類の中でエゾ鹿の残渣に依存する猛禽類、オジロワシ、オオワシ、クマタカなどが猟銃の鉛弾による中毒で命を落とすことが知られるようになりました。
その対策として鉛弾の規制が始まりましたが、当初は一向に無くなる気配がなかったわけです。
しかし、その最前線にいる猛禽類医学研究所の齋藤獣医師の奮闘もあり、徐々に浸透し今ではほとんどのハンターが大物猟で鉛弾を狩猟で使用することは無くなりました。
しかし、一部には不心得者が居るのも事実です。
鉛の銃弾を所持するだけでも違法となった現在においても鉛中毒は無くなりません。
他地域(道外、外国を含む)で中毒になった個体が・・・という話もありますが、急性であることを考えるとその説には無理があります。
一向に無くならない事態に、ハンター = 悪という単純な図式が出来上がります。
この問題を解決するには徹底した鉛弾の国内での所持・販売・使用禁止もしくは獲物の完全回収しかないわけですが、回収は現実的ではありません!
心臓に命中しても走る獲物、半矢となってどこまでも逃げる獲物、物理的に困難な場所に行ってしまうことは珍しくありません。
結局、狩猟においては鉛弾の規制が一番です。
まぁ愛護に言わせると狩猟自体を無くせという話にすり替わりそうですが?
ハンターは悪でしょうか?
実は自分、ハンターとなって9年ちょっと、その前に34年羅臼町の天然記念物保護監視員としてワシ類を中心とした監視員をしています。34年の間にいろいろありました。
見つけた巣は一体、何個?
見つけたワシの死体は何体だったかわかりません!(鉛は無し)
交通事故で飛べないワシの保護が2回。
20代の頃には地元で起こった散弾銃によるオオワシの銃撃事件!
身内にはハンターが複数いましたが、正直言うと動物を殺すハンティングに良いイメージはありませんでした。
そう、どちらかというと愛護に近かったと言えます。
でも、待ってください。
ハンターが多く今ほど獣害が深刻でなかった時代においても、最後に頼りになるのはハンターでした。
やがて時代の流れでハンターが減り、獣害が目立ってきたころ40代PTA会長をしていた自分、通学路に普通に羆が出るようになりました。
エゾ鹿は溢れかえり、昼夜を問わず町中に出ては毎日のように交通事故!
出動できるハンターは?
そして自分が銃を持つ決心がつくまで、そう時間はかかりませんでした。
ハンターとなって見えてくるものがあります。
理解できないでしょうが、命の重みです。
奪う側になって、まさかです。
最初の2年間は撃つ直前になって何度もためらい、撃たずに帰ってきたことがあります。
命を奪う怖さと、その責任?重み?なぜ?理由は?そんなことばかりスコープ越しに思うんです。
今の新人ハンターが普通に撃てることに少し驚いていますが、自分はそういう意味では決してハンター向きでは無いです。
命を奪うことに慣れましたが
そういう自分でもハンターの側として生態系のバランス、獣害との戦いにおいて少しは役に立ちたいと同時にもともと根底にあった狩猟本能が目を覚ましました。
ハンターは悪でしょうか?
悪としましょう・・・その悪の自分が出くわした事件です。
その時頭に浮かんだのは過去にあった事件のような連中!
国内希少野生動物種天然記念物オオワシ(絶滅危惧Ⅱ類(VU)の不法投棄
不法投棄発見日時: 2017/2/16 12時50分頃
発見者が道道221塘路厚岸線を上尾幌駅方面から国道44号線に向けて進行中に左手側のガードロープが張られた付近に多数のカラスの群れを確認。
エゾ鹿の不法投棄又は交通事故死体があると判断し下車、確認に向かい発見した。
現場は200メートルほどの直線区間で道路脇に投棄しても見えないような急な法面が数か所ある中の真ん中付近、国道44号線より約700m地点。道路脇からは5mほどの斜面に無造作に投棄されていた。
ガードロープ上からは3ないし4頭のエゾ鹿の残渣を確認し、ハンターによる不法投棄と判断したが、同時に鳥類の死体を確認し、最初は埋もれて一部しか露出していなかったのでカラスと思っていたが双眼鏡で確認すると羽の色合いから不自然を感じ近寄って再確認し、ワシと判断!ハンターによる射殺遺棄として判断を仰ぐべく関係者へ通報する。
第一報先:12:57(携帯記録)猛禽類医学研究所・齋藤慶輔氏へ
東京出張中の為、渡部獣医師へ連絡をされ大まかに説明。
折り返し渡辺獣医師より連絡があり上尾幌駅で待ち合わせることに。
第2報先:羅臼ビジターセンターT氏
第3報先:釧路市猟友会S氏
第3報先:北海道新聞釧路支社
14:20 環境省釧路事務所から保護管1名、釧路総合振興局より2名、釧路猟友会より1名、猛禽類医学研究所より1名の自分を含め5台で現場へ向かう。(環境省及び振興局は渡辺獣医師が連絡)
14:30 現着し確認作業。渡部獣医師が雪の中からオオワシであることを確認し、事件として釧路総合振興局が担当区域の厚岸警察署へ通報。
この時点でも全員の見解としてはこのエゾ鹿は狩猟により獲られ、必要部位を除いて遺棄されていると判断、オオワシについてもハンターによる射殺と判断している。
厚岸尾幌派出所と思われる地域課の巡査が到着。聞き取り調査などを行い、希少鳥類に絡む事件として生活安全課の応援を頼む。
16時頃現着。生活安全課の指示のもとワシの回収とエゾ鹿の確認を行う。(ワシ回収時はインフルの可能性も考慮し石灰散布)
オオワシは若鳥1羽、成鳥1羽を確認したが強い衝撃と思われる骨折箇所が散見されているが原因はこの時点では推測の域。
エゾ鹿の回収。メス成獣2頭、メス子1頭、オス子1頭の合計4頭
1頭は食害が進んでいるが、他の3頭は無傷に近い状態で弾痕を確認したが全くない。代わりに銃によるものではない骨折箇所や皮膚の擦過傷部、皮下出血や内臓出血が見られる。
尚、オオワシ成鳥は無傷の3頭のエゾ鹿の一番下になる位置にあった。
オオワシ2羽は猛禽類医学研究所が回収。当初疑われたエゾ鹿の弾について解剖予定であったが無しに
最初に現着した警察官が当初よりハンターによる遺棄の不審点を指摘していた。
① :鳥類のワシ類を撃つ危険性を考えるとあり得ないのではないか
・発砲目撃の危険性。
・空に向ける矢先の危険性。
・回収に伴う目撃の危険性。
・車載し自宅に持ち帰る危険性。
・わざわざシカと一緒に道路脇に捨てる危険性。
現場の状況及び検視の結果から推測されること
交通事故死体又は鉄道車両事故死体の運搬回収業者による不法投棄の可能性が高いこと。
問題点
委託業者から動物死体について処理報告がなされたことについて役場、市役所にされていない可能性。
役所内での希少動物に関する取扱いの無知或いは理解不足により回収させても、或いは回収してもそのまま業者任せの可能性。
無知或いは危機感の無さからくる取り扱いの手間を省くための行為が常態化している可能性。
潜在的な事故や病気による生存個体、死亡個体が報告されないまま闇に葬られている可能性。
希少鳥類に保護、報告が当たり前と考える性善説から来る考えが根底から覆される落とし穴であり業者による不法投棄は根が深く氷山の一角と考える場合が自然であり大きな問題でなると思われた
この問題が公となり改善される可能性よりはむしろ真逆により慎重に確実に知られないうちに処理される可能性の方が高いと思われる。
どうでしょうか?
普通は一般的に考えて面倒なことには巻き込まれたくないものです。
見つけたとき、鹿の食害が進んでいてそれが尚更ハンターによるワシの投棄だと思いました。
黙って立ち去れば数日以内にワシはキツネが持ち去り、証拠は残りません!
鹿の死体だって交通事故で終わったでしょう。
それ以前に誰も気が付きません!
これがハンターの仕業だったとしたら、きっと大きな事件として全国的に扱われた可能性があり、我々ハンターはますます肩身の狭い思いをしたでしょう。
きっと、自分は多くのハンターから『余計なことを』ということで叩かれたかもしれません!
常日頃、愛護から叩かれ、あらたに仲間であるはずのハンターからも叩かれていたかもしれません!
そして、なによりもさらなる銃規制の強化につながったはずです。
それでなくても狩猟の現場を残酷な現実として載せることに文句を言う人はいます。
でもね、自由です。
やましいことがない以上隠す理由はありません!
狩猟や動物に関わる世界って綺麗ごとではありません、現場は凄惨です。
知るべきです。
綺麗な部分しか知らないまま大人になると、ろくな人間にならないというのが自分の考えです。
猛禽類に関しても全てのハンターが悪いわけではないと知って欲しい。
(撃ったのもハンターなら、見つけて通報したのもハンター)
我々の目は風景に溶け込んでいるはずの違和感を察知することに長けている。
それは獲物を探すために研ぎ澄まされたもので、視力とは全く関係の無いものです。
それが鳥獣保護員などにハンターが多い理由であり、理にかなっているのです。
狩猟する側と保護する側、一見すると相いれない仲のような気がしますが、互いに睨み合うよりは双方にとって有益であると思います。
早く事件の真相が厚岸警察署の手によって解明されることを望みます。
事件に関する情報をお持ちの方がいましたら書き込んでください。