状態から数日前には漂着していたものと感じました。
隣町、標津町に海岸に珍しいアカボウクジラが死んで打ち揚がりましたが、当初は学術的に新種の可能性があるクジラではと生物学関係者の間で緊張が走りました。
(アラスカで1例、羅臼で数例あり、確定させるためにはあと数例が欲しい)
昨日の午前中、所用で羅臼町の街中に居た自分に連絡が!
午後から大至急、現場へと向かいました。
標津町の現場ではすでに自治体が処分の準備中で間に合い、学術的資料の採取と運搬に向けていくらか協力させてもらいました。
こういう海岸に漂着する動物やゴミなどは所有者がいないか、わからない場合はその地域の行政が処分を担当します。
世界自然遺産登録の羅臼町とは違い、こういうノウハウや解体調査に伴う様々な事案に対処する能力のない自治体は大変です。
今回は産業廃棄物処分場で分解処理されるという。
調査のための解体が学識者の意見でしたが、それには自治体事情で協力は難しいという。
担当自治体が悪いわけではなく、それが日本国内の大部分の対応です。
運良くというか、その後の自分の詳細な画像送付でこのクジラが未発見種ではないことが判明し、とりあえず危機は脱しましたが、学術的には希少種であるわけです。
いつも現場で思うのは日本は昔と違い?学問や教育の分野でどんどん縮小、歪曲されていると感じることです。
今年、国立・公立系大学の研究補助に関する経費の大規模削減が発表されました。
それ以前にも度々問題になる日本人学生の教育費関連の不当な扱い。
ここ数年のノーベル賞受賞は20年、30年あるいはそれ以上の研究があって初めて受賞されていることを見ても、如何に長い目で見なくてはいけないかということを示しているわけですが、この国は未来への将来を担う若者への投資を怠り始めている。
あと10年もすれば『あのころの日本は』ということになりそうです。
少し話が反れましたが、大事な発見が埋もれる、埋めてしまうことにいろんな分野で危機感を覚えます。
これは、中東(IS=イスラム国)や共産主義者で行われる文化的遺産の破壊や有識者の粛清と最終的な意味においては何ら変わり有りません。
現場で体調測定のために掘り起こしている最中は、まだ新種とされるカラスと信じていましたので正直気持ちが『悶々』としていました。
尾びれを掘り起こした。
外見から種の同定のために埋もれていた頭部も掘り起こし、画像をすぐに送付。
地元役場の方では日鯨研へ体組織の資料を送ると言われましたが、量的に少ないことと各国内大学、研究団体に廻す可能性が厳しいと感じ、自分も承諾を得て採取、すぐに送付しました。
隣町担当者は理解がありましたし、北海道ストランディングネットワークのことについて知っていたので連絡も入り何とかなりましたが、これが別な自治体であったなら厳しかったでしょうね!
一部の愛護団体はこういうことに理解が無いようですが、こういうことは世界中の学者の間では普通に行われていること。
参考までに載せておきますが、標本は様々なところへ送られます。
研究の基礎となる資料、標本無くしてはスタートすらできないわけです。
1年2年後ではなく、20年30年あるいはそれ以上先を見ておかなければいけないということを知っておいてほしい。
どこかの政党の代表者が『2番ではだめなんですか』なんて言って研究費の削除を騒いでいた時期がありましたが、今の自民党政権も大差ありませんね!
今回は新種ではありませんでしたが、世界に発表するにあたりあともう少し資料が欲しいというのが日米両国の研究者の思いです。
大型哺乳類の発見は近年では非常に珍しいことになるわけでそれがこのまま埋もれてしまうかどうかは皆さんの協力によるところが大きい!
クジラ?それがどうしたと言われそうですが、何が後世に必要になるかわからないわけです。特に基礎研究の資料は!
学の無いただの漁師兼猟師でもわかることが、一流大学を出た官僚や政治家には解らない?
正月を前にドタバタしました。
『世間に存在する悪は、大半が無知に由来するものだ』アルベール・カミュ