あるハンターとは自分です。
今から10年以上も前の羅臼町は当時在住されていた方々ならご存知の通り、冬場はそこいら中にエゾ鹿の姿が見られました。
少しでも地面が見える道路脇の斜面や当然、住宅街であろうと舗装道路の縁であろうとお構いなしでした。
あれから冬場に行う様々な駆除や生け捕りなどでずいぶん減ったなと思っていましたし、用心深い集団は山奥に避難し人里に現れることも極端に減りましたしね。
狩猟の楽しみは減りましたが、一般の方々が交通事故や花壇や庭菜園などの被害を被るのを防いだと思っていました。
実際、エゾ鹿の姿を追って山奥に入っていきますがごく限られた地域でしかその痕跡を認めることができなくなり、もうこれ以上の狩猟・駆除圧は必要無いのではと思うようになっていました。
羅臼町を除き他地域では狩猟期になると一斉に鳥獣保護区へエゾ鹿が避難を開始します。
根室管内では別海町野付半島、別海町走古丹から風連湖周辺、根室市別当賀周辺が良く知られており、数千から数万頭規模だと思われます。
羅臼町と標津町の境界線には植別川という河川があるのですがその奥、標津町側に通称『十條の森』と呼ばれるエゾ鹿の越冬地があります。
保護区ではないので昔は元気の良いハンターが入っていましたね!
ただ徒歩以外での入林が不可能で山奥になるため、もう10年も前からハンターが入林することは無くなっていました。
先日、その川の羅臼側牧草地にエゾ鹿20頭ほどの目撃情報が寄せられました。
過去の例ではこの時期に見られるということは考えられないことです。
真偽を確かめるべく、また可能であればどう巻き狩りをすべきかカメラを忘れて偵察に行ったのです。
牧草地には無数の足跡があり確かでした。予想では崖の下、羅臼側の陽のあたる斜面に居ると読んで覗きこんだ時でした。
鹿も自分も無警戒でした。
目の前に50頭ほどの群れ!川伝いに山方向へ走りました。
するとそれに驚いた他の鹿が一斉に動き出したのです。
20頭単位ほどでそれが合流しながら川向こうの標津町十條の森へ
圧巻でした
その数、少なく見積もっても300頭ほど!
呆然としていると、状況を把握できず点在して傍観しているエゾ鹿の姿がそこいら中に見えます。
おそらく、視界の届かない範囲も計算に入れると1000頭は下らないはずです。
気を取り直して一度、車に戻りカメラを持って地図を見ながら、最初の計画通りの待ちに着く場所を確認に行きました。
鹿の足跡だらけです。
こうして見ている間も対岸からのたくさんのエゾ鹿の視線が自分に集中しているのが判ります。
物理的に鹿に気が付かれないように配置に着くのはトンネルを掘る以外に不可能です。
大部分は森の中に消えたとはいえ、まだいくらか見えています。
でもね、あっちは標津町、我々にはどうすることもできません!
標津町のエゾ鹿の越冬地は薫別、崎無異の山奥、野付半島だと思われることから、十條の森の鹿は春になると川を渡って羅臼側に来るのでしょう。
十條・・・現在の日本製紙社有林です。植林され鬱蒼と広がる平地の森からやってくるエゾ鹿!
あまりの広範囲に正直どうしてよいのか思い浮かびません!羅臼猟友会20人に満たない数でどうしろと・・・・?
夕方日没後に牧草地を見に行きました。
走りながら撮影
スピードを緩めると白いお尻を向けて一斉に!
狙撃も無理ってことね!
そりゃそうです。用心深く人を避けて山奥に居る連中ですから!
人間の思いとは裏腹にエゾ鹿は遥かに狩猟圧、駆除圧に順応していました。
ごく狭い地域で、限定的にみた場合のみ駆除による効果は上がったのだと信じていますが、北海道内全体ではきっとこういう人が知らない場所がいくつもあって戦力は蓄えられているんだろうなと思いました。
自衛隊へ一個師団、貸してもらえませんか?