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イシイルカのマスストランディング報告

2月7から9日にかけて処理した現場での報告です。

2月7日、早朝から流氷の動きが早く、朝の段階で相泊方面は接岸との話を聞いていました。

流氷帯は隙間なくひしめき合いながら狭い根室海峡に押し寄せてきます。

その日の昼頃には羅臼漁港付近まで流氷が接岸。

今回、集団座礁(以降マスストランディングと記入)が起きた羅臼町海岸町付近も接岸し、その時刻には周辺住民の目撃でイルカもしくはアザラシ、トドらしきものが閉じ込められていると認められていたようです。

16時頃、周辺住民漁業A木さんから羅臼町役場へ第一報。

16:06自分へ役場T氏から連絡が入りました。

『イルカが流氷に閉じ込めれれていて、今はまだ生きている』

その時点では1頭ぐらいだろうと思っていました。

日没が近づいていて画像が欲しい・・そう思い観光船各社へ連絡。

16:25知床財団T氏から第2報。

『ネズミイルカの群れで十数頭はいる』という話に2005年2月に起こった羅臼町相泊のシャチマスストランディングが頭をよぎりました。

その時の様子を『世界の川端さん』が撮影に間に合いました。

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なぜか、急にマスストランディングのことが気になり・・・

ちょうど事件が起こる数日前に記事を書いたばかりで不思議なものを感じます。

時間的に日没で中標津町に居た自分は間に合いませんが道中を急ぎます。

その日のことは2/7の記事として投稿しています。

深夜の海、流氷群と氷点下の海水。救出作業は2次災害の危険性があり無事を祈りながら帰途に

翌日、2/8北海道内各地は最凶寒波による荒れ模様で警報だらけです。

ところが幸い羅臼町は言うほど荒れず、作業が可能な状態。

早朝7時に現場に着くと前日まであった流氷は沖に去り海が開けています、既に『世界の川端氏』と北海道新聞記者古谷氏がいて、1頭の死体があるだけ、他はすべて助かったのではという話に1頭の犠牲で済んだのは幸いと思いました。

2人は現場を離れ、友人漁業者中陳君と作業開始。

波間に漂うその1頭を回収しに胴付長で海に入り、念のため消波ブロックを覗き込むと・・・・・Image may be NSFW.
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既に絶命しています。

2人で慌てて周囲を捜索開始。

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まだ生きていますが、足場が悪すぎるうえに吹雪模様にと



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こちらは四角い囲みは既に絶命しています。

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寒い中、遺体回収作業をボランティアで中陳君も手伝ってくれます。

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こちらも生きていますが、乗り上げていて自力で脱出、出来ない状態で深く足の届かない自分は中陳君へ救助を要請。

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皮膚は剥がれ、あちらこちらから血が滲み、噴気孔からも血が噴き出して横になって泳いでいます(画像中央)。画像下部には死体

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心配そうに様子を見守る中陳君!

正直な話です、4頭の救出でどの個体も自然治癒は99.9%不可能と思われましたが、安楽死という選択肢は無いので祈るのみ。

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3頭確保したところで大勢の助っ人が来ました。

羅臼町役場、知床財団です。

こういう協力体制がしっかりできている所は世界自然遺産知床らうすの誇るべきところです。

他市町のストランディングに関わることも多いのですが、典型的な事なかれ主義、役人気質に嫌な思い、残念な対応に気持ちが荒むことがあります。

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さて、道路への引き上げを任せている間に捜索、

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押し寄せる流氷から逃れようと、岸部の消波ブロックに頭から潜り込んで絶命しました。
人や四つ足動物と違い後ろに進む、バックすることが出来ないので一度この狭い中に潜り込むと自力では脱出できません。
潜り込んだ先が顔を上げて呼吸出来れば生きていられたのですが、多くはそのまま呼吸できず溺れ死にました。

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やがて羅臼漁協も駆けつけてくださいました。

生きているイルカを役場『あきちゃん』にお願いし、沖へ出るように放してもらいますが噴気孔から血を流しながら舞い戻ってきます。

流氷の恐怖がそうさせるのでしょう。

何度もその作業の繰り返しに心がやられなければと思いました。

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人が岸から近寄れないところ、道路へ引き上げることが出来ない場所は漁協の船でお願いするしかないです。

12時を前に天候が悪化してきました。視界が利かなくなり流氷の動きが変化しはじめ、危険な為その日の作業は中止、道路へ引き上げたイルカは既に積み込み完了し、船に揚がったイルカは羅臼漁港へ

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船には4頭。

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役場トラックには5頭。

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すぐに漁業者がボランティアでタイヤショベルを用意!(羅臼素敵です)

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4頭は自分のトラックへ積み込み、合計9頭を引き渡し場所へ搬入。

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引き渡し場所で大学のトラックへ積み込み8日の作業を終了しました。

画像が不鮮明なのは某愛護団体がこれらの活動に対してクレームを入れたらしいので学生及びトラックの鮮明なものはボカシを

これらの貴重な資料は『バイオミメティクス分野、医療分野など彼らが保護するものに対しても恩恵が受けられるということをわかってくれないんですよね!

これは頭の固い自治体にも言えますが!

その日の北海道新聞夕刊に掲載されました。

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早めに掲載していただいたことで誤解や攻撃的な憶測が先走りせずに済み、新聞社に感謝です。

というのも、引き揚げ作業や港でイルカの吊り上げ作業を観光客らも撮影していて、違う取り扱い方をされかねなかったので予防線として大事なことです。

鯨類については外国人ほどヒステリックですからね!



家に戻り、翌日の予定についてやりとりしながら・・・『俺は何をやっているんだろう』と眠りに入る。



2月9日快晴です。

干潮時刻が午前11時頃に合わせて10頃に現地集合ということに

冷え込みましたね!

満タン充電のデジカメが外ポケットだったのでいきなり電池残量がありません表示

誤魔化しごまかしの撮影ですが、スローモーでピントが合う前にシャッターがゆるりと・・・Image may be NSFW.
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滑り落ちないように、転ばないように!

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昨日に引き続き道新記者(上)も手伝います。

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尾の部分はキタキツネに喰われました。

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流氷漬けです。

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回収個体で一番デカい200k超を抱え出す作業。

さらに捜索範囲を広げて確認しましたが3頭の確認で済みました。

引き揚げ可能な現場まで海の中を歩きます。

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足元が不安定ですし、引いていくイルカが波や岩に引っかかり予測不可能な動き・・・Image may be NSFW.
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自分じゃないですが・・ご本人の名誉のため言いませんが・・・氷点下の海水に・・中に・・・響き渡る悲鳴が素敵ですImage may be NSFW.
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大学も現場に到着し3頭積み込みました。

合計12頭は全て東京農業大学オホーツクキャンパスに搬入。9日早朝から東京農大、北海道大学、帯広畜産大学の学生、研究者らが集まり解剖検査が始まっています。

新鮮な個体からは貴重な情報がたくさん得られます。

ウィルス分野、遺伝子分野など、国内各地の大学や研究機関の要望に応え、それらの貴重なサンプルが送られて研究、やがて世に還元されるでしょう。

地道な作業ですが、気になるのは国がこういう研究分野はじめ教育予算を縮小していること、近い将来、ノーベル賞は日本から輩出されなくなるだろうと言われています。

未来に投資できない国、伝統文化技術を守れない国は亡ぶと言われていますね

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記事の中で一人で作業したようなイメージがありますが違います。
『枝幸町でもシャチが犠牲になったケースが過去3件報告されている』とありますが正しくは『犠牲になったケースもあり、流氷での集団座礁ケースが過去3件報告されている』でしょうかね

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1977年枝幸町でのシャチ8頭マスストランディング記事です。



今回の座礁が起きた位置、遺体回収した位置について表記しておきます。

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流氷でのこういうマスストランディングは知らないだけで実は頻繁に起こっているということを自分も感じていましたが、2006年に斜里町の知床博物館研究報告にも同様のことが書かれていますので紹介。

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赤枠の中にもあるように、2006年の7~8年前?同様にイシイルカの羅臼でのマスストランディングがあったようですが、当時はこういう報告やネットワークが確立されていない時代でしたのできちんとした記録に残っていませんね!

自分が知っている流氷によるマスストランディングの記録です。

1977年2月5日  枝幸郡枝幸町 シャチ♂7頭、メス1頭、合計8頭。
2004年2月16日 枝幸郡浜頓別町浜頓別 ネズミイルカ約30頭(生存)
2005年2月7日  目梨郡羅臼町相泊 シャチ♂2頭♀8頭(生存1不明2)合計12頭
2005年2月27日 択捉島別飛  シャチ6頭(雌雄不明)死亡5頭、生存1頭
20015年2月20日 野付郡別海町野付半島 イシイルカ2頭、同じ時期に近所でも同様のストランディングあり。http://kujira110.com/?p=1681

そして今回。

2月はまだ海氷面もあり逃げ遅れる鯨類が多いということなのでしょう。

なんかまだまだ書き足りないことがある気がしますが、ここからは鯨類研究者らがやることです。


こんなことやっていますが、実は鯨類もイルカも好きなわけでもなく、単に好奇心だけで動いています。

良い言い方をすると『少年の心』Image may be NSFW.
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普通に考えて『ガキ』です。Image may be NSFW.
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でもいいじゃないそんなの一人ぐらい居たって!



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