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Channel: 知床桜
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ツチクジラ科種不明鯨類とのカオスな時間

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羅臼町海岸町のサシルイ岬にクジラの漂着があると漁業者から通報が関係者らにありました。

その後、勘違いと偶然が折り重なり該当クジラの確認が遅れました。

原因は近くであったイシイルカのストランディングともう一つ・・・


急カーブの5m以上の防波堤の真下という陸上からの目視が困難な場所だったことでしょう。

現場は狭い急カーブで海側に電柱があり道路側からの個体回収は不可能。

岩礁と防波堤、消波ブロックで海岸伝いからの重機の進入回収も不可能。

海からは遠浅の岩礁地帯が100m以上続き、これまた不可能。

なんとも、一番厄介な場所にストランディングです。

住宅地、道道を横断してデカイ羆も餌付き、なんとしても回収しなくてはいけないわけです。


役場・知床財団・自分・北海道大学・土木会社の意見も聞き事態は『シン・ゴジラ』の出現で迷走する政府のごとき?

『ヤシオリ作戦』ならぬ、何とかなるさの『ハショリ作戦』と相成りました。

決戦は11月30日AM08:00

前日から主力部隊の北海道大学水産学部の精鋭4名が釧路入り、早朝に集合です。

到着時には既に羆対策の武装した知床財団職員が現場で警戒中!

昨日から荒れる予報で大部分の漁業者は沖止め(出漁中止)ということで、もちろん自分も義勇兵として参戦です。

北西の強風が吹き荒れたあとはうねりが入る羅臼、満潮は昼頃、雪の予報も、日中の最高気温は氷点下、厳しいコンディションです。

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まずは実況見分!

浅いとはいえ海の中での解剖は史上初!

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カオス(混沌)な時間の始まりです。

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まずは計測等、地元の知床らうすリンクルで働くOさんも参戦し、20代の乙女4人が立ち向かいます。

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脂肪計測のために切れ目を入れています。

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解剖にはもちろん手順があり、徐々にお肉が露に!

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この時、体内に充満していたガスがプシュ~と吹き出しOさん(両手に鉤)の顔面にしばらくゲホゲホしていましたが根性で乗り切りました。

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手際よくどんどん解体しますが、ハンターや調理人ならわかると思いますが脂肪が作業の行く手を阻みます。

あっという間に刃物は切れなくなり、冷たい海水、気温、風邪が彼女らの手の感覚を奪います。

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それでも、激しくおしゃべりをし、声掛けし、励まし合い作業は進みます。

こういう時、男は逆に無口になる物ですが女性は逆なんですね!

どんどん増す海面、うねりも容赦なく入ってきました。

一番上の白い帽子が自分です。

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画像ではわからないかもしれませんが、周辺海域はクジラの血で真っ赤!

足元が見えず、皆に注意するように言っていた自分が見事にコケました。

クジラの血を含んだ海水は甘かった!

今現在、リンパなのか首の筋肉痛なのか?痛い!・・・1か月後、街がゾンビで溢れていなければよいのですが?

4人の乙女の奮闘で徐々に解体が進みます。

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肉運び専門の自分(左端)と内臓に跨り解体中のリンクルOさん(漁師胴付長)

防波堤の上には肉を人力で持ち上げ、車輛まで運ぶ役場職員3名と知床財団職員2名

現場はまさに血の海!

腐臭と血の波飛沫を何度も被って、言動がおかしくなりつつある乙女4人!

除肉により、軽くなった鯨は浅瀬に移動!

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疲労から言葉が出なくなった乙女4人とひたすら肉を運ぶ自分!

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内臓のサンプル採取とM准教授による頭骨の除肉作業。

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東大出の数学の先生ですが冬の羅臼前浜で腐乱した鯨の頭を刻んでいます・・・・・人生って面白いですね

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昼休み、トイレなんぞは近くに無く、女性泣かせです。

食事中の臭い・・・もう誰も気にしません!

その間も、役場職員らは除肉した肉がトラック一杯になるたびに往復2時間の処理施設へ運搬しています。

昼で実家へ帰省するというリンクルOさん、疲労困憊で両手は幽霊ポーズ、自分で手袋も胴付長も脱げなくなり、靴も履けない(介護した)ほどでしたが、根性ありました。

自分が常日頃思っていることの一つに野生動物のガイドをするのであれば外見の綺麗な部分だけではなくそのすべてを知ってこそだということ!役に立たない知識は無いと思います。それをどう使うか、どう利用するかで違ってくるわけで、彼女の今回の経験はその後のガイド業に少なからず良い材料として影響してくると信じています。

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午後からは骨外しも進み、意識して声かけ合い頑張りました。

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小腸の長さを計測!1メートルごとに折り返して計算し全長を決めます。

とにかく、ここからすべての残骸を回収しなくてはいけないので持ち運ぶことが出来るサイズに細切れにするのが大変でした。

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午後からは吹雪模様!

全身は血の波飛沫と汗と雪でズブ濡れ!

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迫りくる寒さと日没!

ギリギリ間に合いました。

集まった誰一人、欠けてもヤバかったですね!

同じような状況で他所の自治体だった場合、きっと業者に丸投げでしょうね!

どう考慮しても、回収運搬処理に100万を下ることはない作業ですが、人力で何とかしました。

これは北海道大学SNH、リンクルのOさん、知床財団、羅臼町役場の協力が無ければ成しえなかったわけで、費用を考えれば極めて安く抑えることが出来て節税にもなり良かったと思います。

件のクジラ・・・発表待ちなんです。

全身の解剖は自分はこれが3回目!

羅臼町は大きく貢献したと考えているのでその時が来たら記念講演などを羅臼でやって欲しいなと夢見ています。

終わる



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